3つのミスが重なると失点するという。それがサッカーのセオリーだ。

ベルギー戦では4つ重なった。
キーパが直接キャッチしやすい山なりのコーナーキック。
ウィークサイドに絞らず、スローダウンに失敗したボランチ。
マークを離してしまったサイドバック。いや、その前に守るのか攻めるのか、共有できなかった監督とチーム。

プロのコーチと飲んだ。彼は残念そうにそう、話してくれた。
その中でこうもいった。

「選手はゲーム中の判断を本能的に行う。瞬間瞬間のジャッジだから。その良し悪しは経験に左右される」

これは奇しくもゲーリークレインが「Source of Power」で明らかにしたことに重なる。彼は「プレモータム分析」の提唱者であり、軍隊や消防士などが行う緊急時のデシジョンメーキングを調査し続けている。
「消防士・医療関係者・軍人などが危機的状況で下す判断の良し悪しは、判断者がもつ経験値の豊富さに依存する。ただし、違う業界の経験はあまり意味がない」
というのだ。

ワールドカップで言えば、「優れたサッカー選手は、ワールドクラスの経験を豊富に持つプレーヤーがより良い判断を瞬間的に行える」ことになる。
事実、日本の選手はどんどんヨーロッパのクラブで活躍している。そして日本代表も力をつけている。今回のようにノックアウトステージで点を初めて取ることもできた。
だが、ベスト8になるためにはまだ経験値が不足しているのではないだろうか?
同じことも監督やスタッフにも言えてしまう。
相手のチームが選手交代や戦術の変更を仕掛けてきたら、すぐさま、ふさわしい対応ができる、チームにもそのメッセージが即時に浸透される、ということが勝ち残るために要求される。

ただし、バックスタッフは決断に多少時間がかかっても良いので、複数の選択肢を吟味、分析、決断する時間がある。(システム2による判断の余地もある)経験値の蓄積方法は選手と少し異なるかもしれない。

それ以上に重要なことは、通常のプロジェクト推進方法では限界を突破できない可能性があるということだ。
それは、プロジェクトの錯誤や、過剰な自信を持ってしまう(日本人はすごい、的な)人間のバイアスであり、ボスのメンツ問題でもある。
そして、ここの解決なしには、優れたリスク管理手法も役にたたないということである。

次の大会はカタールだ。ゴールははっきりした。そして、同じ取りこぼしは許されない。「しくじることができない」プロジェクトはスタートした。