失敗は探してでも経験しろ。だが同じ間違いを二度以上繰り返すやつはアホだ。
名言だ。そしてこのアホは自分のことだ。

というのは、PDCAを回せ、と耳にタコができるほど言われたことがある。
かつて海外向けパソコンの需要予測をやっていたときだ。受給は例外なくピッタリ合わない。そして、次はもっと正確に数値を詰めよう、とその度毎に思った。

別の例では、システム営業をやっていた時を思い出す。
毎期、売上予算の目標値が部長から降りてくる。課長が会議を招集する。そこで、それぞれの担当が見込み数値を出す。それを集計する。足らない。
「よし、と3ヶ月!で数字をつくるためのプランをするぞ」と課長。
それぞれの役割、責任も明確にする。プロセスをチェックするポイントも儲ける。そして、そのチェックポイントの会議も予定された。
その当日、自分は視線を机に垂れていた。約束した見込みには達していない。いや、それ以上に、見込んでいた案件すら遅れることが次々明らかになる。
課長の優しい顔が曇る。
こうして予算は達成されず、来季はがんばるぞ、さあ、夜の反省会だ、ということになる。

こんな過ちを何回繰り返しただろうか。全くアホにつける薬はないものだ。
時は経ち、自分も多少は賢くなった(つもりだ)、行動経済学、プレモータム分析、などを知ることとなった。そして感じることがある。

「PDCAは優れた考え方だ。でも実行する人間の癖を考慮に入れてない。」

例えば、最初のプラン(P)。完璧に実行可能でモチベーションまで配慮されたプランなんてあり得るのか?
人間には自信過剰バイアスがある。そして計画の錯誤を引き起こす。 この時点でプラン自身に罠が仕掛けられていることになる。

PDCAの(D)〜実践はどうだろう?ここには、双曲割引という落とし穴がある。
毎日忙しく、予想できない事態が起こるビジネス。そこでは、どうしても未来のプランは先送りになってしまうのだ。

チェック(C)。ここには、観察者バイアスが潜んでいる。こいつのおかげで、評価社は計画の悪いところばかり目につく。その中に含まれる良い点やチャンスは見過ごされてしまう。
結果、非常に厳しく、保守的な改善点が次のプランに織り込まれることになる。

こうしてPDCAはどんどん保守的になってゆき、それにもかかわらず完璧な実行は夢となる。
いや、今のように変化が激しい市場ではついて行くことすらできなくなる。挙げ句、そのPDCA自身忘れさられてしまうのだ。

では、どうしたら良いのだろう。

Pはただのプランでなく「プレモータム分析」を導入してはどうだろうか?こうすることで多くのメリットを得られる。
まずは、計画の錯誤から逃れることができる
次に、品質改善活動などでありがちなスコープの拡大を防止できる。どういうことかというと、改善という計画をする場合、「改善」が独り歩きしてしまい、そのプロジェクトだけでなく、会社全体の品質改善活動に結びつけてはどうか?など、話が大きくなってしまうのだ。そうすると、一般化だけでなく、考慮すべき点が増え、社内調整も複雑になる。こうして計画は実現困難な規模に育ってしまうのだ。
プレモータムの場合、プロジェクトのゴールが失敗したと仮定し、逆算する。だからスコープの一般化や、売りな拡大は起きにくいのだ。

D(実行)するときは、双曲割引に対抗するために、実行フェーズを小さく分割するとよい(Divided)。そして最初の一歩を優しいものとする。チェックポイントもこまめに儲ける。学校で小テストを繰り返すようなものだ。すると、急なアクシデントと同じくらいの緊急度になり、片付けよう、という意欲も高まるのだ。

C(Check)はむしろ 良い状況と悪い状況を比較理解し、何をすればよいかを見出すべきだろう。だからC は (Cotrast) が良い。通常のPDCAサイクルでは、あら捜しだけに終わりかねない。

  A(ACT)は(ADJUST)にすべきだろう。チェックポイントで、計画の遅れが見えてきたとする。その遅れを取り戻すために、無理をしても、なかなか追いつけるものではない。無理をする分、品質が落ちたり、無理な残業が発生したりする。むしろ、ゴールをずらす、あるいはスケジュールをいじる、そして、100%でなくても90%の成功を確実なものとする、そういう路線に変更したほうが現実的でないだろうか? 
予め報告しておくことで、上司だって心の準備ができると思う。(中には根性主義の鬼上司も居るかもしれないが・・・その場合でも最後の瞬間に「できません」と告白するよりマシだろう)
これは、プレモータムノードマップツールでビジュアライズするとどのあたりに着地するかが見えやすくなる。 そう、PDCA(Plan,Do, Check, Act)ではなく同じ綴でもPremortem, Divide, Contrast, Adjustがこの変化の激しい今の市場ではふさわしいのではないだろうか?いかがだろう?