ベンチャー企業の生き残り率はたった5%という。
あなたの目標もなかなか実現しない。
仕事は忙しい。
会議も多い。
その上手戻りが多くある。

例えば、ボスが打ち出した新製品計画があったとする。
綿密に計画し、会議を重ね、進捗管理を定期的に行った。でも結果は不満足なものだった。ポストモータムという、反省会を行った。すると、見込みが甘かった、最初から怪しいと思っていた、などの意見がボロボロ出てきた。

では、どうして最初から意見しなかったのか?

答えは「空気を読んだ」から。ボスに「あなたののプロジェクトを見込みが甘すぎます」なんて誰も意見できるはずがない。おまけに、人間は始めてしまったことに過度に執着する傾向がある。挙げ句の果ては、兎に角、自分だけは大丈夫だと正当化したがる。(「コントロールの錯誤」という)こうして、プロジェクトは失敗してしまい、会社は潰れるのだ。

では、このような悲劇を救済する何か良い方法はないのだろうか?

それが、「プレモータム・シンキング」だ。

これは、行動経済学の考え方に基づく逆転の思考法である。
実現したい未来の目標が「失敗してしまった」と、計画を始める前に想定するのだ。
そして、(関係者がいれば)議論を行う。

(未来の)失敗の様子を事細かに描ききる。

そして、対策をこれから始める「計画」に組み込むのだ。

「最悪のシナリオ検討」と同じじゃないか?

違う。

プレモータム・シンキングは、「目標を決めた後に」だが、「計画をつくり始める前に」行うのである。

前述したとおり、人間はバイアスの塊だ。上司などが関わっている場合はメンツの問題も起こる。このような、「計画の錯誤」「自己中心性バイアス」「コンコルと効果」など、人間の持つ感情のもつれの影響を考慮に入れ、日々の仕事を成功させる確率を大きく高める。

「最悪のシナリオ」は、目標自身を萎縮させてしまう。

「最悪のシナリオ」は計画自信をだめにしてしまう。


「プレモータム・シンキング」は転ばぬ先の杖なのである。それも、失敗をイメージすることで成功を導くという逆説的だが、効果的な方法なのだ。


先日、行動経済学でセーラー教授がノーベル賞を受賞した。

これはプロスペクト理論でノーベル賞を受賞したカーネマン教授に次いで二人目となる。

ところで、カーネマン教授によると、人間は見たり聞いたりしたことにすぐ影響されてしまうのだという。ヒトは知的動物と言われるが、実は理性はなかなか働かない、いや、理知的と思っていても結構それは幻影だそうだ。

すなわち、実は、人は不合理な生き物で、バイアスの塊ということだ。

一方、いままでの経済学が想定している人間は、完全に合理的に振る舞うとする。ところが、現実の世界では、人間はスッキリ理性的に割り切れるものではなく、一筋縄ではいかない生き物らしい。

だから、どんなに緻密に計画したり、配慮しても人間による想定外な行動が起きてしまい(不幸なことに、当事者はそうと気づいていない)、多くの間違いが起きる。

その結果、株式市場はクラッシュし、会社は潰れ、悲惨な失敗が繰り返される。


この「プレモータム・シンキング」は、人間の認知システムのバイアスを緩和する方法なのだ。

自分はこの手法を新製品のリリースに応用し、著しい効果を実感できた。それも残業はほとんどしていない。

今回、この方法を使いやすくするために「プレモータム・イメージェリツール」や「プレモータム・ノードマップツール」を開発した。

この新しい思考法を、お伝えして行きたいと思う。

ところで、プレモータム・シンキングをわかりやすく一冊にまとめました。こちらをご参照ください。