1年半後の定例モーニングミーティングのことだった。
伊達社長がリラックスした感じで口にした。
「来週ヨーロッパでi-Modeアプリのセミナーで話してくれ、と言われてね、ちょっと二〜三週間、回ってこようかと思う。」
いやに嬉しそうだ。
「ちょっと待ってください、いくらかかるんですか?」と自分。
「四カ国だから、まあそれくらいかなあ」と伊達社長
自分は思わず声を上げた。「というか、ちょっと計算して見たのですが、お金もうないですよ、どうするのですか?」
「リース系の投資会社と話しているのだけど」伊達社長の声も心なしか小さい。
「いくらです?」初耳だ。
「まあ、四千万くらいかなあ・・」と、伊達社長
「いつ頃入ります?」食い下がる自分
「まだ最初の打ち合わせだけど、まあ大丈夫じゃない?」伊達社長は目を合わせない。
もう我慢出来ない。「焼け石に水ですよ。収入なんて月五人分くらいしかないんですよ、もう遅いかもしれないですけど、銀行から借りるとか、・・・リストラとか・・まず自分たちの給与を止めるべきじゃないですか・・」
伊達社長は続ける。「でもね、ドコモはヨーロッパにどんどん進出しているんだ。ここで我々がヨーロッパ市場の携帯アプリケーションで名前を売っておけばこれから大きなビジネスチャンスがやってくるのだよね。考えてもみたまえ。全ヨーロッパのアプリストアでわが社のソフトが売れるのだ。それが可能なのは、ドコモのアプリを作ることが出来て、英語が得意な我々だけなのだ。そのためには、今が重要なのだよ・・」
さすがに自分も1年以上、この業界で奮闘している。状況は人一倍わかっているつもりだ。口の中でつぶやいた。
「・・・ホントかよ?そんな夢物語、まだ言ってる場合か?」
ここで収入の状況を説明しておいた方が良いだろう。
(次回へ続く)
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