(前回より続く)


クリスマスパーティをやろう、と社長が言い出したのはちょうどその頃だった。皆の気分も良くなるでしょう、オフィスで軽くつまみましょう、というので、ああ、いいですね、と賛同した。ある日の夕方からビールを片手に集まった。いろいろな話をする。でも当たり前だが、「どうしようね」、「どうなるんだろうね」、という話題になった。苦しい。あれ、「社長はどこ?」「会議室にPSを投影してグランツーリスモやっているよ」ワンフロア下の会議室を覗くと、オフィスのプロジェクターを使い、ゲームを壁面いっぱいに投影し、本格的なハンドルとペダルを揃え、若いエンジニアと楽しそうに競っている・・・ 

きっと優しい人だったのだろう。ゲームが好きなエンジニアは多いから、今日くらいは現実をわすれようという気遣いだったの・・・だろう。でも自分は・・ここで心が折れた。

 

自分の小さな器では、ここが限界だった。副社長のポストにいる自分がやめることは下の社員からすればあり得ないことだろう。泥船とはいえど、副船頭に当たるわけだから。それはもちろん自覚していた。いま振り返ってもどうにかできなかったのか、冷や汗が出ることを抑えることはできない。何かできなかったのか、打つべき手はまだあったのではないか?そもそも副社長として船出の前にいくらでも対策を立てることはできただろう。今も悪夢で飛び起きることがある。しかし、当時は必死だった。自らと家族を守るためにはこうするしかなかったと必死に言い聞かせていた。

実は、人材関連会社向けのサーバーシステムを以前手がけていた関係で、人材紹介会社にはしょっちゅう顔を出していた。当たり前だがヘッドハンターたちとは懇意だった。そのなかからある方がITセキュリティの会社のポジションの紹介をしてくれた。それに乗ってしまった。面接はトントン拍子に進み、オファーレターをもらった。サムとゴンちゃんにはなんとなく話していた。そして定例の朝会で社長に言った。

 

「もう限界です。すみません、先に降ろさせて下さい。」