スキャン 8(終わりのクリスマスから続く)

夕方、サムが近くのモンスーンカフェに誘ってくれた、なんだか気詰まりのなか、テーブルをはさみ、水ばっかり飲みながら、モバイルアプリの未来を語ったような気がする。きっとサムのやつは独立して、立派に立って行けるのだろうな、それに相応しい頭脳と信念をもったひとかどの奴だった。一方、自分は、金だけ使って、注文も対して取れず、プランしたゲームもあまり儲からず、どこに行こうか、引っ張ることも叶わず、半端者だ、と心の何処かで誰かが囁く。そんな強烈な劣等感に身をさいなまれつつ、その一方でどこかで安堵しているという、どこかアンビバレントな状況に目を閉じてしまいたくなるほどの脱力感を覚えながら一時間テーブルを挟んでいた。

そして、二人の間には話すことはもう何も残っていなかった。共に抱いていた夢は既に散ってしまっていた。特に自分は副社長という立場からすれば、後に残す会社や仲間たちのことを放り出して逃げ出したと言われても仕方がない。いや、曖昧にするのはやめよう。確かにそうだったのだ。僕らは、後悔と無念と、そして多少の開放感を感じながら、なんともばつの悪い空気の中に佇むしかなかった。私はやがて、喉の奥から絞り出すように、じゃあ、とだけ言ってやつと別れた。あれから二度とモンスーンカフェには行ってない。