昨年の11月23日のことだ。かつてのクラスメートから妙なFBのフィードがあった。
「フレディの見積もった$1ミリオンは$15ミリオン(日本円で約十五億円以上)になったぞ、おめでとうエリック」
以前書いたかもしれないが、UCLAーNIUS EMBAにかよっていたときのクラスメートで変人のエリックという奴がいた。「仮想現実」狂いのオタクで、事業中、クラスメートと教授を悩ませたオタクだ。 エリックがこのアイデアを語りだしたのは2008年頃だったと思う。クラスメートは「またエリックかよ」「仮想現実ですか。はいはい」と冷たい態度だった。
ところが、クラス一の優等生のフレディが救いの手を彼に伸ばし、エリックの温めていたアイデアをビジネスプランに落とし込む手伝いをしていた。
売り出す(予定)の製品についても、ただの「仮想現実」から「現実世界の出来事を仮想現実に取り込むことができるサングラス」とそのソリューションに変わってきていた。そして2010年、今から7年前になるがEMBAの教授とクラスメートの前でその新しい事業計画の発表を行った。

そして、驚くべきことにエリックは実際にそのプランを抱え、卒業後にベンチャーを始めていたのだ。
このフィードにはウェブリンクが付いている。そこにあるニュースには、奴の会社 Vergence Labs が密かにスナップチャットに買収されていたのだ。そのストーリーが明らかになっていた。(https://cdn.ampproject.org/c/s/www.yahoo.com/amphtml/finance/news/untold-story-vergence-startup-focused-130000638.html )

エリック


買収されたのは正確には2014年後半なので奴は4年間頑張り続けたことになる。
上記の記事に描かれているように、最後は預金を全てを使いきり、ギリギリの状態で買収されたようだ。そして、スナップチャットはエリックのサングラスを大きな話題を持って世に出すことになったのだ。

そのファイトに、こころから「おめでとう」を贈りたい。

エリックがプレモータムを意識していたかどうか分からない。しかし、フレディの投資家としての目から、エリックのアイデアは無残な結末を迎えてしまうとしか見えなかった。そして、その結末がフレディの経験と視点からはっきり見えたからこそ課題を克服できるようにエリックのオリジナルなアイデア自身を発展、大きく変更する事が出来た。
プラスして、エリックの前向きに自分のビジョンを信じる力が推進力となり、今回の結果に最後は繋がったことは間違いない。
一方、そういう自分はどうしていたか?EMBA同窓の友人の話から、このプレモータムの考え方を知ることができ、仕事に生かすことができた(と思う)。担当製品は、おかげでゼロからのリリース2年である得ないような成功を収め、業界トップクラスの売り上げを上げることができた。その期間中も、ほとんど毎日、家族と自宅で夕食をとることができている。(宴会などの日は除くが;))
これまでに学んだことは、計画の失敗は金銭の損失だけではないということだ。
心のダメージや、失敗に終わったプロジェクトに費やした膨大な時間が最も大きなコストなのだ。
だから失敗から学べ、二度とするな、と言われる所以である。以前綴ったように、自分は多くの失敗を日本でも、さらにアメリカでも繰り返してきた。そして、その過程で知る事ができた「プレモータム・シンキング」はあれからの自分を随分助けてくれたたと思う。
というのは、この方法、実は日本人に最適な方法である。あなたには、「日本人は悲観的だ」、「真面目すぎる」とか「本当に勤勉だね」、と言われた経験は無いだろうか?プレモータムのポイントは、いかに悲観的なストーリを、プロジェクトに着手する前に想像できるか、そして始まったらきちんとその修正サイクルを回せるか、にかかっている。
楽観的だけに結末を想像すると、「こんなはずじゃなかった」になりやすい。マイルストーンを無視すると、ゴールできる可能性を時間と共に高めてゆくことができなくなってしまう。そういう意味で、プレモータム・シンキングは、大きなアドバンテージがあるのである。
尚、誤解しないでいただきたいのは、プレモータム・シンキングはあくまでも「転ばぬ先の杖」であり、私たちの想定の範囲内でなるべく良い選択を行える様にする考え方だ。決して未来を予見できたりするものでは無い。また、悲観的に考えることが思考の範囲を広げる手助けになるのであって、「やる気」や「心の平穏」などの手助けになるものでも無い。楽観的に自信を持って物事に臨んだ方が楽しいし、チャレンジする勇気も湧いてくる。その上で、必要のないやり直しや、それがもたらす失敗を出来るかぎり避けるこができれば、アウトプットも出せるし、家に早く帰って家族との時間も楽しむ事が出来ると思う。このブログを読んでいるあなたに少しでも、「プレモータム・シンキング」を試してほしい。そこでもし、成功までの最短距離を走ることができたのならば、あなたは人生の膨大な時間を節約できる入り口に立ったことになると思う。