プレモータム・シンキングを実施することで、あなたの目標の達成できる確率は高くなる。あるいは、このままでは目標に到達しない事が明らかになってくる。ならば、自分の身の丈にあったゴールに変えたらよい、または実現までの期日を伸ばしたらよいか、などが目で見えるようになる。新製品はもしかすると当初の半分の売り上げかもしれない。
ダイエットも三ヶ月では到底無理なことがわかり、一年かかるかもしれない。しかし、何も考えずに楽観的なプロジェクトを実行し、最後の最後に悲惨な破綻をしてしまう、ダイエットなら原料どころかリバウンドで体重が増えてしまう、ということを、起きる前に手を打つことができ、次善の結果を得ることができるのだ。これがプレモータム・シンキングの転ばぬ先の杖となる。
ところで、ここまで読んで、
「そんなごちゃごちゃ悩む前にポシティブに物事を考えてゆけば、どんな困難にも打ち勝つ事が出来る
「プレモータムみたいに、いつも悲観的に考えているとやる気も萎えてしまう」と、思われないだろうか? 著者もそう思う。
実際、ベンチャービジネスで成功した人物に対するインタビューを読むと、問題にもめげず、自分の信じるボジョンに向かって挑戦する姿勢が成功の大きな鍵であることは確かだ。楽観的で前向きであるほど、「想定外」の困難が降ってきても、へこたれず頑張る、「七転び八起き」の力が成功への道になる。
一方、行動経済学で明らかになってきたように、楽観性は裏の顔もあり、楽観性が高まればそれだけ「計画の錯誤」が起きてしまう。これが行き過ぎると「思考停止状態」になり、「根性があればなんでも可能なんだ」となってしまう。
そう、そこで重要なのは、楽観性がもたらす「強力なレジリエンスの七転び八起き推進力」と「計画の誤謬」が起きないポイントを出来るだけ高いと所でバランスさせることだと思う。
下のチャートを見ていただきたい。X軸に「物事を楽観的に捉える度合い」を置いた。Y軸には「計画の誤謬」が起きてしまう確率をマップしてみた。そして、二種類のカーブを描いてみた。最初の曲線は「計画の誤謬」が起きてしまう傾向を表している。それによると、楽観性は楽観的であるほど「計画の誤謬」が発生し、トラブルの種を増やしかねないのだ。(左上がりのカーブ)。別の直線は、「計画の誤謬」が起きた場合、楽観性でどれだけ克服できるかを描写してみた。つまり、問題に対する抵抗力(克服する力)により「問題そのものの発生率」は下がる傾向にある。これが右下がりの線で表される。そして、これらの二つのタイプのラインが交差するところが楽観的でいる最適なポイントになる。このポイントが最も効率よく前向きで、なおかつ想定外の問題の発生を最も少なく出来る。楽観性とレジリエンス

もし、「問題に対する抵抗力」カーブをもっと右肩下がりにできれば、さらにあなたの「想定外の問題」の発生率は少なくする事が出来るのではないだろうか?この右肩下がりにする力が「プレモータム・シンキング」なのである。
つまり、我々は「前向きでポシティブ」であるべきなのだ。なぜならそれにより問題を克服する力は高くな理、結果としてしパイ率は下がるはずだ。だが、楽観性は両刃の剣である。人間のもつバイアスにより想定外を起こす率を上げてしまう。この両者をより高いところでバランスさせる〜想定外は起こるが、高い克服する力を持つ〜状態を「プレモータム・シンキング」は、目指しているのだ。