(プレモータム会議はつづく)
暗田主任は、そのままホワイトボードに向かう。真っ白なボードの真ん中に丸い円を書いた。
そこに「システムの発注」と描く。
さらに、中心の丸から線を伸ばして「相手の課長があってくれない」と描く。
「浦霧課長があってくれない、のはなぜですか?」
「多分忙しいのだろう?」宇奈月課長
「いや、そうじゃない、浦霧課長は待っているんだ」と剛田部長が急に声を出した。
「何を待っているのですか?」暗田主任
「SSシステムの提案と見積もりが出てくるのを待っているのだ」剛田部長
「提案が出てくるとどうなるのですか?」暗田主任
「おそらく浦霧課長はSSシステム派だろう。だけどその上司の部長は俺と懇意だ。だから理由をつけてSSシステムしか受注できないように仕掛けるのだ」剛田部長
暗田主任はホワイトボードの「相手の課長があってくれない」から線を伸ばして「SSシステムの提案と見積もりが出る」さらにそこからもう一本線を伸ばし「SSシステムしか受注できないように仕掛けを作る」と書いた。
「でも、発注ってそれだけで決まるものなのですか?」思わず僕
「もちろん浦霧課長の独断で決まるものじゃない。上司の承認もいるし、コンプライアンスの問題もあるから、購買部門のチェックも入る。でも、浦霧課長の部門の要求にあっている提案書や価格を出している会社が一社だった場合、上司も、購買も何も言えないだろうね」