(プレモータム会議は続く)
なるほど。と暗田主任。
「では提案書はどうでしょう?」と言いながら②の提案書の横の行に小さな丸を二つ、先ほどの①の選択肢に繋げて描いた。
「提案書はまだ頑張れば間に合います」と僕。
暗田主任はにっこり、眩しい笑顔を見せた。
「じゃあ、新海くん、頑張ってね」
それから③のAFH関連部門の根回しの行に先程と同様に丸をかく。選択肢が増えて行ったので丸の数は四つになった。そしてその下の④の承認プロセスにも同様の作業を繰り返した。
これで誰の目にも大きな四階層のツリーが明らかになった。
改めて暗田主任がいう
「多分、私たちは今、ここにいます。」と2階層目右の丸を指差した。
「全てがうまくいくにはここに行かなければいけないと思います」と四階層目の左端の丸をさした。
僕の目にも、これは可能性のツリー構造とわかってきた。それぞれのポイントでうまくいけば左に降りる。ダメなら右。一番うまくいけば全てが左下に降りてゆく。全く成功しなければ右下にたどり着く。そして、おそらく、一番下の階層のどの丸にたどり着くかでこの案件の成功か失敗の度合いがわかってくるのだ。
「この案件を受注するには、何としてお期日に提案書と見積もりをきちんと出さないといけないですね。さらに、万が一、提案書があまりうまく行かなかった場合に備えて、③の業務部にもコンタクトを取っておいたらどうでしょうか?、そして最後の承認プロセスに関連する購買部などにも目を配っておけないですか?」
と暗田主任が剛田部長の目を見ながら言った。
「君、技術だろう。営業には口を挟まないでくれ。」宇奈月課長が不満そうに声をあげる。
「いいんだ、これを見れば、何をすれば良いのか一目瞭然だ」剛田部長が右手をあげて宇奈月課長を制してきっぱり言った。
「暗田主任だっけ、ありがとう。宇奈月課長、新海、早速作戦を練るぞ」明るい声で剛田部長が宣言した。