青梅線に小作という駅がある。
先日、古い友人から呼び出され、久しぶりに青梅線を乗り継いでいった。そこは、かつて東芝青梅工場があった場所だ。
東芝のノートブックパソコンは世界トップシェアだった時期がある。そして、その中心拠点として、開発から製造まで、この青梅工場が担っていた。
小作の駅前はあまり変わらないように見えた。しかし、繁華街は明らかに寂れていた。通りを抜け、かつての工場跡地へ向かってみた。まっさらな地面になっていた。工場だったから敷地はとにかく広い。見渡す限り茶色が広がる。ショックだった。
ご存知のように、東芝は上層部の権力争い、ウェスティングハウスの投資など、数々の失敗を繰り返し、結果、事業を切り売りし、リストラを行い、今に至っている。パソコン事業もその例外ではない。多くの友人がいまだに苦しんでいる。そのことを思うと胸が痛い。

しかし、思い起こせば、西田社長がウェスティングハウスの買収を行った時、世間は喝采を送っていたのだ。優れた経営手腕と雑誌などで褒め称えられた。
ところが福島原発の事故で一気に風向きが変わる。
そして、その後、「ウェスティングハウス」のバリエイションが高すぎた、契約があまりにも一方的だった、など問題点が吹き出してきた。そして、一気に東芝の行方は怪しくなってゆき、西田社長の経営手腕に批判が集中した。

だが、最初に書いたように、事故の前は全く違っていた。

まさしく、批判した方は「後知恵バイアス」である。

そして、西田社長たちは「計画の錯誤」に陥っていた。

さらに、「コンコルド効果」によって傷口は開いてしまった。

どんな経営者でも人間である限りはバイアスから逃れられない。そしてその規模が大きければそれだけ、失敗の被害は多方面に及んでしまう。
また、失敗から学ぼう、という営みは繰り返されてきたが、「たられば」分析になってしまい、失敗は繰り返される。
プレモータムが万能薬とは言わないが、もし、プレモータム分析を買収の時に行っていたら何かがちがってきたのではないか?と、小作の駅で思わず思ってしまった。(まあ、後知恵バイアスでもあるが・・)